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執筆者の写真環生 出山

愛くるしい骨 -看取るということ

やっとブログを書く気力が出てきました。

秘密結社猫のために生きよ 出山です。


ツイッターで流れてきた漫画に涙が止まらないんです。

是非皆様にも読んでほしいので紹介します。

短編ですぐ読めるのに、こんなに心が動く。


「愛くるしい骨」遊木哉吉先生



うちにもお骨があります。

ハムスター8匹分と、猫1匹分。

本当はペット霊園とかに永代供養で預けるなり、自分の墓に入れてあげられればいいんだけど。嘘を書くのは嫌なので普通に書きますけど親子間トラブル&お寺の住職さんとうちの親が揉めた関係で入れてもらえず。夫は家庭の事情で出山家の墓はない…。

それに、自分自身がまだこのお骨を手放せそうもないんです。


それは後悔しているからです。


作中でばあちゃんは、随分前から心の覚悟を決めて看取る準備をしていました。

わたしにはそれがなかった。


ハムスターのかりんとあられは、本当に何の前触れもなく突然死でした。

定期的に病院に通い、健康診断も爪切りもして病気もなかったんです。

はぎまるみたいにお迎えした直後から異変を感じて通院し、一生ステロイドを飲み続けなければと言われたわけでもない。ちとせみたいに、迎えた直後からジアルジアと闘っていたわけでもない。

あられが死んだ1か月後にかりん。メンタルが発狂してました。

だいふくには癌が見つかり後ろ脚を切除する手術。

それでも毛も生えてきて3本の足で回し車を回した瞬間、嬉しくて嬉しくて。

命の力強さを感じたのに。

その半年後、だいふくは仕事から帰ってきたら亡くなっていました。

当時の仕事は16時出勤、帰りは日付が変わって3時。そこから送迎や持ち帰りの残業を朝7時ごろまでして、寝るのは朝9時。週6勤務。インフルエンザだろうが骨折しようが休むことが許されない。通院が必要な子がいれば、寝ないで病院。

頬袋にたくさんのおやつを詰め込んで、自分の体の周りを頬袋から出したおやつで飾り付けて、亡くなってました。

あずきはたまたま仕事の休日の夜にケージ掃除をしていたらトイレの砂が血だらけ。どこの病院もやってなくてかかりつけも閉まっていて、東京から医者を呼びました。

あずきも2歳を過ぎてましたから、腎臓病と子宮疾患でした。

そのあと滅多に外に出たがらないあずきが、出せ出せとアピールしてきたことが一度あって。手の中でひとしきり撫でて声をかけてました。今度は戻りたがったからケージに戻して、ご飯を買いに近所のコンビニへ出かけて、帰ってきたらあずきはキレイに巣の中で亡くなってました。あずきなりの最期の挨拶だったのでしょうか。

あんなにステロイドを毎日頑張って飲んでいたはぎまるも、2歳まであと数週間というときに亡くなりました。やっぱり仕事に行ってる間に、ひっそりと亡くなってました。




そう、猫もね。瓈來ね。猫白血病(FeLV)陽性が判明してから、他の猫はみんな猫白血病ワクチンをすぐに打ち、ストレスがないように心がけてきました。

夜は一緒の布団で寝るし、家の中はどこでもついてくるし、最愛の次男坊。

発症なんかしない。せめて7年と言われていた寿命までは一緒にいられる。

そう信じていたんですが2017年。春に発症しました。

ある日突然うずくまって動かなくなり、ご飯も食べなくなり、最初の病院では痛み止めを出されて終わったのですが3日経ってもまだご飯を食べないからセカンドオピニオンに行ったらもう重度の貧血。発症したなんて思ってもないから仕事行く前に連れて行ってそのまま仕事に行く気でいた自分が愚かしい。スーツで行って診察室でギャンギャン泣いて。

できることならなんでもしてやりたい。そうだ、輸血があるじゃないか。

医師にすぐ輸血の相談をしました。でも、できませんでした。ドナーを用意できなかったんです。

何とか食べてほしくて大好きだったちゅーるも爆買い。1日1本食べられればいい方でした。

寝る時間をすべて削り倒して、猫白血病の治療を調べました。

その時どこかのサイトでアメリカでの成功例があるとかないとか見てしまったんです。


初めて、海外で移植を待つ子供を持つ親御さんの気持ちがわかりました。

街中で、よく募金活動とかしてるのありますよね。〇〇君の移植のために!と。

親御さんの気持ちが初めて分かった時でもありました。

私自身は親から虐待を受けて育ってますので正直「生きていたい」という気持ちがほぼ理解できず、冷たい感情を持っていました。

でも知ってしまった。


結局、仕事に行く前に通院してビタミン剤等の注射をしてもらい、そのままケージの中で寝かせて仕事に行き、秒で帰宅して家で金にもならない残業をしながら、1~2時間仮眠して、また病院行って、仕事行って、そんなことしかできなかったんです。

広いケージで、トイレは段差がないようにして、ふかふかの毛布を敷き詰めて。

そんなことしかしてやれなかった。


瓈來は、少ない休日、膝の上でゴロゴロした後、私が猫砂やご飯を買いに行ってる間に、ひっそりと眠るように亡くなっていました。

帰宅して発狂してかかりつけに電話して、お金幾らでも払うから診てくださいと叫ぶ私に、できることはもうないんです…と先生は言いました。


1歳8か月。短い命。あれほど泣いた日も、そうそうない。


この頃には私もすっかり限界を迎えていました。寝不足、過労、ストレス。

交際していた元彼は、猫の事情を伝えていたにも関わらずLINEをよこしてきては「今日も来てくれないんだね」「いいよもうひとりで飲むから」などと送ってくる。

仕事は休むことが許されない。毎日怒鳴られ、無視され、陰で笑いものにされ、膨大な量の仕事だけが降ってくる。仕事柄身だしなみにうるさかったので少ない休日に髪の毛やネイル、まつエクのメンテナンスもしなければまた怒られる。


勇気を出して猫が亡くなったこと、火葬の日だけ休ませてほしいこと、それ以外の日はお望み通り何日でも出勤すると上司に伝えたあの日。

返ってきた言葉は


「猫が死んだぐらいで…」

「困るんだよ、みんな休みたいのに休んでないの!代わりはいないの!」

「ちょっと人より多く仕事したぐらいで権利なんか主張すんな」

「お前の代わりは、いくらでもいる」


結局火葬は5日も経って、午前中の朝イチで予約して、そのままお骨を車に積んだまま仕事に行きました。バカみたいですよね。自分でもバカだと思います。

元彼もうるさいので火葬が終わって少しした頃に顔を出したら「そんなにあからさまに悲しまれても困る」「俺だってガキの頃ウサギ死んだことがあったけどあれは…」などと言い出し、終いにはビールの空き缶を投げつけられて「じゃあ何?お悔みでも送ればよかった?花でも買って送ればよかった?何すりゃよかったの俺?」って言いだすし。

本当に、自分でも自分のことをクズだと思います。


そう、私に足りなかったのは「時間」でした。


金もあって信頼できる先生もいて通販頼んでも即日届く都心部に住んでて、

時間だけが足りないって。マジで笑えない。

お金はもちろん大切です。

時代は進化しました。腎臓病の薬が出来てFIPでさえ治療薬が出来たほどです。お金は大切なんです。

でも、時間だけは、買えないんです。


作中でばあちゃんは、こてつちゃんのお骨を見て「骨まで愛らしい」と言います。

私は火葬場で泣き崩れて、お骨と対面した時には「ごめんね」しか言えなかった。


「看取り」

ありとあらゆるものが試される時。

諦めないで治療する財力、弱りゆく我が子とゆっくり過ごすための時間とそれを見届けるだけのメンタル、輸血が必要ならドナーを探せるだけの人間力、おまけに運まで試されてる。


この作品、どうしてもみんなに読んでほしかったのと

昔の自分を少しでも吐き出せたらと書きました。

作中で孫の鉄くんは「時間はいっぱいあるから」と言いました。

ばあちゃんは「時間は限られたものだから」と言いました。

時間。大切にしてくださいね。

生き物を飼っている以上、私達は先に死ぬわけにはいかない。

泣き叫ぼうが血反吐はこうが、終生飼育ってのはそういうことだから。




【あとがき】

秘密結社猫のために生きよ が活動理念の中にブラック企業撲滅、ブラック反対を掲げているのはこの件があるからです。ちなみに私は全身ぶっ壊して飛び辞めしましたが、風の噂によると私の業務を引き継いだ人はみんな3か月以内に退職していたそうです。

この件があってから元彼とは別れ話を何度もしましたが別れてもらえなかったので自然消滅にしておきました。仕事と異性にはよく気をつけてな、若い子たち。

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